これから海上コンテナ輸送は、国際情勢や政策の影響を受け、効率的に物を運びにくくなります。
まず、2024年10月時点でピークシーズンは例年より1ヵ月ほど早く終息しました。
急騰していた運賃も下落しています。
このまま下がり続ければ、急騰する前の5月頃の水準に落ち着くかもしれません。
とはいうものの、第4四半期の輸送需要は底堅いと見込まれています。
また、コンテナの必要性も高いままです。
この記事では、10月時点のスポット運賃の動向や、今後の見通しについて以下の内容を紹介します。
- ・2024年のピークシーズンは早期終了
- ・アメリカ向けの輸送需要は底堅い
- ・海運会社は輸送需要を堅調と見込む
- ・海上コンテナの需要は高いまま
- ・政策がコンテナ輸送を直撃
今まで輸送需要が高まるタイミングでコンテナ運賃は値上がりしていました。
しかし、これからは政策や国際情勢によって料金や輸送需要が変化するでしょう。
コンテナ輸送費は下落に推移するも需要は堅調
ピークシーズンが終息したものの、輸送需要は一定の水準を維持する見込みです。
この章では、今年のピークシーズンと第4四半期の見通しについて解説します。
- ピークシーズンは早期終息
- アメリカ向けの輸送需要は底堅い
- 海運会社はコンテナ輸送の需要を堅調と見込む
それぞれ確認していきましょう。
1. ピークシーズンは早期終息
高騰していたコンテナ運賃は下落が続いており、2024年10月現在ピークシーズンは早期終息したと判断できます。
例年のピークシーズンは6~10月末とされていますが、2024年は5月から輸送需要が急激に伸びて、運賃も急騰しました。
運賃がどこまで高くなるのか危惧されたものの、7月中旬から下がり始め、10月現在では下落傾向が続いています。
イギリスのドリューリー社が毎週発表するWCI(世界コンテナ指数)は、10月17日時点で40フィートコンテナ1個あたり3,216ドルとなっています。
画像引用:World Container Index - 17 Oct
高騰する前の2,725ドルよりは高いものの、このまま下落が続けば、年末ごろには同程度の運賃になるでしょう。
同社が新しく発表したアジア圏内のスポットコンテナ運賃を表すIACIも同様の値動きをしています。
画像引用:Intra-Asia Container Index - 15 Oct
こちらは40フィートコンテナ1個あたり500ドルであり、高騰前より金額が下がっています。
また、コンテナ取扱量が世界第3位の中国の寧波(ニンボー)港が発表するNCFI(寧波コンテナ運賃指数)レポートでも前述したドリューリー社と同じような値動きをしています。
画像引用:海上丝路指数
以上のことから、2024年のピークシーズンは1ヵ月早く始まり、1ヵ月早く終ったといえます。
2. アメリカ向けの輸送需要は底堅い
ピークシーズンが早期に終息しても、輸送需要は落ち込みません。
特に、北米では輸入貨物の取扱量が前年より増えると見込まれています。
国内消費が好調であることに加えて、長期化が予想された東海岸の港湾労働者のストライキが3日で終息し、物流の停滞や混乱が大規模にならなかったのが要因です。
NRF(全米小売業協会)が10月8日に発表したグローバル・ポート・トラッカー・レポートによれば、10月の輸入貨物は好調に推移するとしています。
正確な取扱量は確定していないものの、レポートでは輸入量を以下のように予想しています。
月 | 取扱量:TEU(前年同月比) |
9月 | 229万TEU(12.9%増) |
10月 | 212万TEU(3.1%増) |
11月 | 191万TEU(0.9%増) |
もちろん、ストライキで業務が停止していた間の物流は停滞しており、回復するには数週間かかると予想されるものの、影響は限定的になるでしょう。
カナダのデカルト・システム・グループ(Descartes Systems Group)が10月に発表した世界海運レポートでも、9月のアメリカのコンテナ輸入量は252万935TEU(前月比1.7%増)だったそうです。
この取扱量は前年同月比で14.4%の増加であるとしています。
このことから、北米向けの輸送需要はピークシーズンが早期に終息しても、例年以上の物量を維持し続けます。
3. 海運会社はコンテナ輸送需要を堅調と見込む
海運会社も輸送需要を堅調と見込んでいます。
そのため、物量の減少に合わせて、輸送力を減らす船腹削減を実施していない海運会社が多いです。
また、第3四半期と第4四半期の物量は、一定の水準を維持するとしています。
10月9日、スイスを本社にしているキューネ・アンド・ナーゲル(Kuehne + Nagel)社は、海運大手コスコ(COSCO Shipping)社の第3四半期の純利益が大幅に増加すると報告しました。
また、デンマークのマースク(Maersk)社は、9月19日にアジア太平洋市場レポートを自社のホームページで公開。
第4四半期のコンテナ需要は不確実であるものの、需給バランスが取れると分析しています。
以上のことから、2024年はピークシーズンが早期に終息しても、コンテナ輸送の需要は堅調と考えられます。
輸送需要は落ち着くのに海上コンテナの確保に躍起
ピークシーズンが終息しても、海上コンテナの必要性は下がりません。
この章では、輸送需要とは異なる動きをしているコンテナについて以下の内容を紹介します。
- ・海上コンテナの需要は高いまま
- ・政策がコンテナ輸送を直撃
これから海上コンテナは、輸送需要の変化ではなく国際情勢の影響で必要性が変化します。
海上コンテナの需要は高いまま
輸送需要の下がりつつあるものの、海運会社やコンテナリース会社は、海上コンテナの確保に躍起になっています。
理由は、中東情勢の深刻化により、スエズ運河~紅海の航路が当分使用できず、アフリカ大陸を迂回するルートが主要航路になると考えられているからです。
そのため、円滑な輸送には大量のコンテナが必要な状態が続いています。
ドイツのコンテナxチェンジ(Container xChange)社の9月のレポートによれば、中国のコンテナ製造は過去最高を記録したと報告しています。
7月だけでドライとリーファーの両方で生産量が85万TEUを超えたそうです。
また、海運会社とリース会社は、10月中旬まで中国で生産されるすべてのコンテナを確保しているそうです。
日本企業も同様の動きをしており、10月5日の日経新聞によれば、三菱HCキャピタル社は2024年中にリース用の海上コンテナに合計で約2000億円を投資すると報じています。
加えて、インド政府はコンテナ不足への対策として、国内製造を支援しており、中国製のコンテナからの脱却を目指しています
以上のように、物量が下落に向かっているにもかかわらず、コンテナの調達が急務となっています。
今後、海上コンテナは輸送需要の有無に関係なく、慢性的に不足気味になるかもしれません。
政策がコンテナ輸送を直撃
国際情勢と政策によって、コンテナ輸送は大きな影響を受け、料金どころか、航路も自由に選べなくなります。
そのため、今までのように需給バランスで料金が決まることが少なくなるかもしれません。
そもそも、2023年の当初の予想では、輸送力が過剰になるはずでした。
国際海事機関(IMO)が設けたCO2排出規制に対応するため、LNGやエタノール、バイオ燃料を使う新造コンテナ船の発注と引き渡しが増加しているからです。
そのため、船が余り運賃の下落が危惧されました。
しかし、2023年末からスエズ運河~紅海の航路が使えなくなり、アフリカ大陸を迂回して運ぶ必要に迫られました。
結果、輸送のために船とコンテナが大量に必要となり、逆に輸送力が逼迫。
2024年10月現在でも、安全が確保される見込みがないため、輸送には大量の船とコンテナが必要となっています。
もちろん、スエズ運河~紅海が通常航路に戻れば、一気に輸送力が過剰となり、船とコンテナが余るでしょう。
このことは、BIMCOのコンテナ輸送市場概要見通しレポートが言及しています。
問題はこれだけではありません。
2024年1月から始まったEU域内排出量取引制度(EU-ETS)も海運に大きな影響を与えています。
この制度は、欧州域内を発着する船舶から排出される温暖化ガスに上限を設けるもので、船が自由に寄港することができなくなりました
そのため、効率的なコンテナ積み替えができなくなり、輸送力を低下させていると指摘されています。
つまり、これからは政策や国際情勢の影響で輸送方法を決めることが多くなり、需要に対して効率的なアプローチが難しくなるでしょう。
当然、効率性の低下に伴い、船やコンテナが今以上に必要になる可能性もあります。
【2024年10月】ピークシーズン早期終了!コンテナ輸送費の乱高下に注意
2024年10月現在、運賃は下落が続き、ピークシーズンは早期終息となったものの、輸送に必要なコンテナの需要は高いままです。
中東情勢の緊迫化により、アフリカ大陸を迂回するルートで輸送に大量のコンテナが必要だからです。
日本のメディアはあまり取り上げませんが、10月2日にイエメン沿岸を航行中の石油タンカーがフーシ派のドローン攻撃を受けたと海外メディアは報じています。
つまり、アメリカ軍は紅海とその近海の安全を確保できていません。
また、イスラエルとイランの対応によっては、原油価格が急変する可能性もあります。
急騰すれば、輸送需要に関係なくコンテナ運賃は値上げしないといけなくなるでしょう。
また、11月のアメリカ大統領選の結果も大きな影響を与える可能性があります。
そもそも2024年のピークシーズンの早期到来は、アメリカによる対中関税引き上げが原因の1つとされています。
これからの海上コンテナの料金は、ピークシーズンが近いから価格が上がる、輸送需要が減ってきたから下がるというわかりやすい値動きではなくなるかもしれません。
そのため、バタフライエフェクト(ブラジルで1匹の蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる)のように予測がより困難になっていく可能性が高いです。
■ 参考サイト(公式やメーカーサイト)
- World Container Index -17 Oct
- Intra-Asia Container Index -15 Oct
- 海上丝路指数
- NRF | October Import Cargo to Remain Strong Despite Three-Day Strike at East Coast and Gulf Coast Ports
- September 2024 U.S. Container Imports Mark Third Consecutive Month of Elevated Volumes
- Maersk Asia Pacific Market Update – September 2024 | Maersk
- COSCO Shipping reports profit increase in Q3 2024 | myKN
- Market Intelligence Hub - Container xChange
- 三菱HCキャピタル、海上コンテナに2000億円 中東緊迫で需給逼迫 - 日本経済新聞
- Container Shipping Market Overview & Outlook September 2024
- Explosive-Packed Drone Boat Slams Into Oil Tanker in Red Sea | SupplyChainBrain
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