2026年のコンテナ市況は、需要の低下と輸送力過剰により低調に推移する予想が出ています。
この予想通りであれば、コンテナ輸送の運賃は下落するため、荷主にとっては荷物を割安で運ぶことができるはずです。
一方で、需要が著しく低下する可能性もあります。
世界一の消費大国と呼ばれるアメリカの国内消費が今後どうなるか分からない状態だからです。
今回の記事では、来年のコンテナ市況と世界成長、アメリカの国内消費について紹介します。
アメリカの経済が落ち込むと、コンテナ輸送全体の需要にもブレーキがかかります。
詳しくは後述しますが、2026年は世界的にも景気後退に突入するか、しないかの瀬戸際の年になるかもしれません。
コンテナ輸送の需要減少が2026年に加速すると予想
前述のように、2026年のコンテナ市況は、需要の低下と輸送力の過剰により低調に推移するでしょう。
Xeneta(ゼネタ)社は、以下のように予想を発表しています。
相互関税が暫定停止してもコンテナ船のスポット運賃は25%下落
ノルウェーの海運市場調査会社Xeneta(ゼネタ)は、コンテナ船のスポット運賃が最大25%、長期レートも最大10%下落すると予測を発表しています。
2025年10月31日、Xeneta(ゼネタ)は、2026年の海運見通しの中で、アメリカと中国が相互関税の暫定停止に合意しても、運賃の下落は止められないと分析しています。
主な理由は、多くの荷主企業は中国にあるサプライチェーンの変更に関する決断ができないからです。
今回の暫定停止の詳細は不明であり、合意が12ヶ月間続くのかわかりません。
そのため、アメリカ国内企業の多くは2026年に在庫補充を急がせ、その後は手持ちの在庫でやりくりをする可能性が高いです。
また、同社はコンテナ船の数が多く船腹過剰(輸送力過剰)になるとしています。
つまり、2026年は、運ぶ荷物に対してコンテナ船が多くなり、運賃が下落しやすい構造になります。
コンテナ船の過剰生産のピークは2027年
コンテナ船の過剰に関しては、2025年10月2日に海事調査会社シーインテリジェンス(Sea-Intelligence)が見通しを発表しました。
この見通しでは、Xeneta社と同様に輸送需要に対してコンテナ船が過剰供給になると分析しています。
しかも、新造コンテナ船の引き渡しが続き、ピークを迎えるのは2027年だそうです。
つまり、再来年まで需要に対して船が多い状態になり、船会社は運賃の価格維持のため、輸送力を絞って運航するでしょう。
また、一部の船会社は値下げをしないと荷物が集まらない状態になるはずです。
荷主にとっては、価格が下がることは好ましいことに感じます。
しかし、船会社が運航する船の数を減らすため、輸送スケジュールが大幅な変更、到着遅れが発生するかもしれません。
まとめると、2026年のコンテナ輸送の需給バランスは、市場のニーズに対してコンテナ船が過剰供給になり、運賃は下落、全体として低調になると予想されます。
荷主には割安で運べるものの、配送のスケジュールが大幅に変わる変則的な年になるでしょう。
2026年の世界経済は低迷する見通し
2026年は、コンテナ輸送の需要低下だけでなく、世界経済も低迷します。
10月14日に発表されたIMFの世界経済見通しでは、2026年の成長率予測は3.1%であり、低迷し続けるとしています。
図のように多くの地域では2025年と比べて、2026年は成長率が下がる傾向にあります。
ユーロ圏は1.1%と軟調で推移、この図には出ていませんが日本は0.6%と見通しは暗いです。
対して、アメリカは2025年が2.0%、2026年は2.1%と成長率は低いものの伸びると予想されています。
また、近頃の報道では、アメリカ経済を堅調と評価する場合が多いです。
しかし、その“堅調”を維持しているのはアメリカ国民の上位10%の富裕層とされています。
理由は、現在のアメリカ国内の経済は2極化が進んでおり、消費は富裕層に偏っている状態です。
そのため、富裕層の財布のひもが固くなるだけで、アメリカの国内消費に大きな影響が出ます。
場合によっては、IMFの見通しがさらに下方修正され、2026年の世界経済はより低迷の度合いが強くなる可能性もあります。
アメリカの国内消費は上位10%の富裕層が左右する
アメリカ経済はK字型経済になっているとされ、10%の富裕層と残りの90%の層では、経済状態は全く異なっているそうです。
この章では、K字型経済や個人消費、2025年のホリデーシーズンの動向を解説します。
世界一の消費大国の現状を把握するのに役立つでしょう。
アメリカはK字型経済
「K字型経済」とは、国民が二極化し、経済的にいわゆる「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれる状態を指します。
つまり、少数の富裕層と、大部分の貧困層に分かれている社会構造です。
このK字型経済では、勝ち組である富裕層は株や債券、不動産などの資産からの恩恵を受け、自然と純資産が増え、豊かになっていく仕組みを持っています。
対して、貧困層は雇用環境の悪化、生活必需品の価格の変動の影響を大きく受け、日々の生活に困るような状態になります。
このように「K字型経済」とは、異なる2つの層に分断されており、消費に対する意欲がまったく異なる状態です。
個人消費を引っ張っているのは富裕層
アメリカが消費大国などと呼ばれるのは、GDPの約7割を個人消費が占めているからです。
もちろん、その個人消費に大きな影響力を持つのが前述した上位10%の富裕層です。
Bloombergの9月17日の記事では、消費全体の49.2%が所得分布が上位10%の消費者によるものだとしています。
このため、現在のアメリカでは消費が富裕層に偏っており、貧困層に属する人々には生活にゆとりがない状況であることがわかります。
そして、上位10%の富裕層の旺盛な購買意欲の源泉となっているのは、株高や不動産の高止まりです。
もし仮に、株や不動産の価格が急落するような状況になったら、富裕層が消費を絞り、アメリカ国内の消費が一気に冷え込む可能性が高いです。
当然、アメリカ向けのコンテナ輸送にも大きな影響が出るでしょう。
2025年ホリデーシーズンの売上予想は1兆ドルを上回る見込み
2025年11月6日、NRF(全米小売業協会)は、2025年のホリデーシーズンの売上が初めて1兆ドルを上回ると予想を発表しました。
この売上予想は、11月と12月の小売売上高が前年比3.7~4.2%増加するとなっています。
もちろん、この売上予想の大半は前述した10%の富裕層によるものが大きいでしょう。
多くのアメリカ国民は、インフレとトランプ関税による小売価格の高騰、大規模なレイオフ(一時解雇)により余裕がないと言われています。
そのため、生活にゆとりのない90%のアメリカ国民の財布のひもが緩むとは考えにくい状態です。
つまり、NRFの予想するホリデーシーズンの売り上げは、富裕層の消費行動にかかっているといえるでしょう。
これはとても歪んだ構造になっていると感じるのではないでしょうか。
先進国は低迷するも発展途上国向けのコンテナ輸送は堅調?
2026年は全体としては低迷気味となる可能性が高いです。
同様に、コンテナ市況も下落傾向で推移するでしょう。
とはいうものの、すべての輸送需要が落ち込むわけではありません。
コンテナ輸送は、多種多様な物品を運ぶため、常に一定の需要のある品物は割安で輸送ができるはずです。
特に、日用品や消耗品、原料など市況の影響が少ない物品はある程度の取引は期待できます。
また、発展途上国の成長率はまだ高水準といえるでしょう。
そのため、発展途上国向けにはある程度の物量があり、先進国向けの需要が低迷するという構図になるかもしれません。
2026年のコンテナ市況は低迷に推移する見通し|まとめ
2026年は、輸送需要減少と輸送力過剰によりコンテナのスポット運賃は下落する可能性が高く、低迷気味に推移します。
しかも、荷物に対してコンテナ船が多いのは再来年の2027年まで続く見通しです。
そのため、市況の影響の少ない品物は、運賃を抑えて輸送できるはずです。
ただし、世界経済の低迷の度合いが急激に進むリスクがあります。
アメリカでは、AIバブルによる株価が高値を危惧する動きがあり、何らかの理由で株価の急落が起きれば一気に消費が冷え込む可能性があるからです。
当然、世界一の消費大国の国内消費が落ちれば、その影響は世界中に飛び火します。
したがって、2026年は世界的にも景気後退に突入するか、しないかの瀬戸際の年になるでしょう。
参考サイト(公式やメーカーサイト):
参考サイト(メディアやブログ記事):











